新しい歌舞伎座になってから、初めての「花形(はながた)歌舞伎」です。「花形」という言葉には、「はなかやか」という意味とともに「若い」ということも含まれています(広辞苑にも「年若で人気のあるはなかやかな者」とあります)。よく「若手による花形公演」と言われることもありますが、二重の意味になります。と、最初から重箱の隅をつつくような話題ですみません。
つい最近、伝統芸能の道具ラボで女方の髪に使うかんざしや櫛を復元したばかりなので、今回はそれにまつわるお話をしたいと思います。『新薄雪物語』に登場する梅の方(今回は菊之助丈が演じています)など、御殿女中や武家女房は「片はずし(かたはずし)」という特別な髪型をしています。髪飾りはシンプルで、正面から見ると横一文字にかんざしがすっと通っています。九月花形歌舞伎のチラシにも写真がありますので、ご覧になってみてください。
九月花形歌舞伎のチラシ(上段右から2番目の写真)
http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/images/kabukiza_201309_f2.jpg?html
このかんざしを床山さんは「はりぬき」と呼んでいます。はりぬきにも種類がありますが、これは断面が楕円の形をしています。このはりぬきは、とても重要な髪飾りですが、作る人がいなくなっていました。それというのも、一見シンプルにも見えて実は中央部で2つに分かれる構造になっていて、作るのが非常に難しいのです。このはりぬきの復元にも道具ラボが関わらせていただきました。
以下の写真で、床山さんが手に持っているのが「はりぬき」です。
(左:歌舞伎床山の高橋敏夫さん、右:伝統芸能の道具ラボ代表 田村民子 撮影:江村伸雄)
櫛やかんざしの復元については、以下の新聞記事をご覧ください。
http://www.dogulab.com/Publications/asahishinbun2013082
九月花形歌舞伎の舞台では、まだ復元した道具は使っていませんが、これから少しずつ使われはじめると思います。かんざしひとつとっても、色や大きさなどに厳密な決まりがあります。「はりぬき」は、『伽羅先代萩』の政岡や『仮名手本忠臣蔵』の戸無瀬など女方の重要な役柄で使われる位の高い道具のひとつです。ぜひ、この小さな道具にも注目してみてくださいね!
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