八月の歌舞伎座は、会社帰りに気軽にお芝居を楽しむ、という観点で第三部(18:20-21:09)がおもしろいかなーと思いました。『狐狸狐狸ばなし』と『棒しばり』。それで、『狐狸狐狸ばなし』に登場する「おきわ(七之助丈が演じています)」の髪型について書いてみます。髪型については、「おきわ」の髪を結った床山さんから話をうかがっています。
『狐狸狐狸ばなし』は古典作品ではなく、近代になって作られたものです。ですので、全体的に堅苦しい感じはなく、現代のお芝居に近い感覚で楽しめる演目だと思います。「おきわ」は若くて美人でちょっと強気。遊郭で働いていたのですが、今はそこから抜けだして女房をしているという設定です。歌舞伎の髪型は、役の性根を表しています。おきわの場合は、宿場女郎などの役でつかわれる「だるま返し」という髪型をしています。これは、実際にお芝居を観ていただくとわかるのですが、頭のうしろに大きなリボンのように布の髪飾りがつきます(正面から見るとそのリボンが狸の耳っぽくも見えます。私だけかな?)そして朱色の玉かんざしが、上から下へぐいっと挿してあります。ふつう髷(まげ)と髱(たぼ)はパーツとして分かれているのですが、この「だるま返し」の場合は、髷と髱が一体になっていて、とっても個性的です。『一本刀土俵入』のお蔦も「だるま返し」です。
後半の「おきわ」の髪型は「いちょう返し」。これは女中や町娘などの役に使われる髪型です。結婚している女性は、ふつうは「丸髷」などを結っているのですが、このお芝居のストーリーに沿って、ちょっとおぼこい(あれ、これ京都弁ですかね)感じが出したかったのだと思います。赤い鹿の子がかわいらしいです。ちなみに、この「鹿の子」という布の髪飾りは、「伝統芸能の道具ラボ」で復元をお手伝いさせていただきました。こうして舞台で使われて、とてもうれしいです。
お芝居のなかで、おきわが自分のかんざしを亭主である伊之助(扇雀丈)にさす場面がありますが、そのかんざしは沢山のたんざく(「びら」といいます)がついた金属製のかんざしです。金属製のかんざしには、たんざくが付いたものと、つかないものがありますが、お芝居の筋に絡む道具になるので、ちょっと派手目なかんざしにしたとのことでした。
『狐狸狐狸ばなし』は、ストーリーがおもしろいので、歌舞伎を初めてご覧になる方にもおすすめで、けっこう笑えます。
歌舞伎座新開場柿葺落
八月納涼歌舞伎
平成25年8月2日(金)~24日(土)
http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/2013/08/post_62.html
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