新橋演舞場の夜の部『仮名手本忠臣蔵 七段目』の寺岡平右衛門の衣裳に注目してみます。
大星由良之助 = 松本幸四郎
お軽 = 中村芝雀
★寺岡平右衛門 = 中村吉右衛門
平右衛門は、足軽という身分でお軽の兄です。黒い着物を着ていますが、途中、肌を脱ぐと下に着ている絞りの柄の着物があらわれます。衣裳の附帳(つけちょう)では、「掴み絞り(つかみしぼり)」と書かれています。大きな絞りの柄がぱっと目立つ衣裳で、複雑なシチュエーションにおかれた平右衛門の心理を暗示しているようです。
道具の復元でお世話になっている「京都絞り工芸館」の館長・吉岡健治さんにお会いしたときに、この絞りについてうかがったことがあるのですが、絞りの世界では「傘巻絞り」という技法に近いのではないか、とのことでした。
★ 「京都絞り工芸館」Webサイトより転載 ★
傘巻絞り
下絵に従って綿糸で細かく生地を平縫いし、縫った糸を引き締めて根元に寄せ、縮められた部分の生地のシワを整えて、絞った部分を根元にして上へ巻き上げる。巻き上がった絞り目の形が傘のように見えることからその名が付いた。
「京都絞り工芸館」のWebには、たくさんの絞り染めの写真が掲載されています。想像以上にたくさんの種類があることに驚かされます。
http://shibori.jp/pl/?category_name=gihou
★★★
ちなみに、平右衛門の「下がり」も「掴み絞り」の柄です。「下がり」とはふんどしの前に垂らす幅の広い布で、助六も赤い下がりをつけています。ちらっとみせる、男のおしゃれなんでしょうね。以前、衣裳さんに平右衛門の下がりを見せていただいたことがあります。持ってみると、布も厚く、かなり大きなものでした。
関連記事一覧: