近藤真理子さんと北澤哲弥さん
東京農業大学の施設・「食と農」の博物館にて「農民芸術―編まれた民具―」という企画展が開催されているというので、歌舞伎・小道具方の近藤真理子さん、植物の専門家の北澤哲弥さんと道具ラボの田村民子の3人出かけてきました。
藁(わら)などを使った農業系の道具が展示されているのですが、私たちのお目当てはなんといっても「蓑(みの)」。ポスターにも、どーんと蓑の写真がありましたので、「百姓蓑」の改良のためにも、ぜひ間近でいろんな蓑を見て、研究したいと思ったのです。
企画展 農民芸術―編まれた民具―
平成29年10月25日(水)~平成30年3月11日(日)
主催・会場:東京農業大学「食と農」の博物館(東京都世田谷区上用賀2-4-28)
展覧会公式Webサイト
http://www.nodai.ac.jp/campus/facilities/syokutonou/exhibits/19004/
蓑は、素材や形の異なるものがいくつか展示してあり、とても見応えがありました。歌舞伎の「百姓蓑」を製作した体験があるので、展示物や展示写真などからも、あれこれ読み解ける部分があり、「百姓蓑」を基軸としながら、「この素材は、百姓蓑より、編み込んだ植物が細く裂けている」、「色味はこのくらいが丁度よいかも」などと、3人で蓑に顔を近づけながら、何度も見比べました。展示品は撮影はOKでしたが、触ることはできません。「蓑の裏側が見たい!」「触って、素材感を確かめたい」という欲求がありましたが、ぐっとこらえて、眼だけで観察しました。
この日は、真理子さんが自分で編んだという「わらじ」を持参していました。展示物のなかには、わらじもありましたので、真理子さんからわらじの作り方なども教えてもらいました。歌舞伎の小道具からの視点や、植物の専門家からの視点が折り重なり、それぞれが質問し合うことで、重層的な鑑賞となりました。展示自体は小規模でしたが、非常に充実した時間となりました。
会場では、立派なパンフレットも無料配布されていました。20ページのオールカラーで、写真も美しいものが多く掲載されていて、貴重な資料となりました。蓑については、専門の研究者があまりいないといわれています。この企画展の展示構成などを見ると、この企画者はきっと蓑にひとかたならぬ思い入れがあるように感じます。いつかご縁があれば、お会いして情報交換ができればとも思いました。