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2014年の夏に、百姓蓑の材料となるチガヤを千葉県の博物館「房総のむら」の方に指導をしていただきながら、収穫、後処理をして準備をしました。そして、いよいよ蓑の作り方を教えていただく時期がやってきました。
【千葉県立房総のむら】千葉県印旛郡栄町龍角寺1028
https://www.chiba-muse.or.jp/MURA/index.html
「房総のむら」では、ふだんは毎年3月に蓑を作っているところを一般公開しています。しかし、作り方の指導までは行っていません。今回、特別なご配慮で藤浪小道具の人に作り方を伝授してくださいました。名付けて「蓑づくり研修」。2月〜3月の5日間、藤浪小道具の工作課の長谷川浩司さん、稲垣涼さんの2名がレクチャーを受けました。道具ラボの田村は、そのうちの2日間を見学させていただきました。以下にご報告いたします。
研修日:2/14,18,19,28,3/1 5日間
※田村は、14,19に参加
【参加者】
藤浪小道具 工作課 長谷川浩司さん、稲垣涼さん
近藤真理子さん、長村みち子さん
映像記録:野村祐紀さん
道具ラボ 田村民子
【蓑作りのだいたいの工程】
・土台となるネットを編む
・ネットにチガヤをつける
・襟のしまつ
・その他しまつ
場所は、「房総のむら」の「下総の農家」エリアです。第一日目は、10時半ごろよりスタートし、16時ごろ終了。風が強く、気温も低い日のうえ、昔の農家の建物で半分ふきっさらし。すごく素敵な環境ですが、とても寒かった! いろりに炭を入れて、暖をとりながらの作業でした。「房総のむら」の人たちとは、これまで何度も交流しているので、みんなすっかり顔見知り。打ち解けた雰囲気。
まずは、チガヤをくくりつける土台となるネットを編む作業からスタートです。1着分のネットの紐の長さは、「7ひろ」(「ひろ」というのは昔の単位)。このネットを編むというのが、単純そうで意外と大変。紐は、房総のむらでは、クゴという植物を使って縄をなっています。クゴは、失敗してほどいたりしていると、折れて使えなくなることがあるそうです。一方、藤浪小道具チームでは、特製のひもを事前に作って持参していました。ビニールの紐をオイルステンで染めて、風合いを出し、それをなって縄にしたものです。これが房総のむらの人たちに大人気! 色もいいし、ほどいてやりなおしても、いたまない。それに蓑はだいたいネットの部分が弱ってくるが、ビニールなら、強度が高く、耐久性もよい。さらに紐はライターの火などで熱して、つなぐこともできる。逆に、やり方を教えてほしいくらい、とのことでした。さすが小道具会社さんは、工夫がすごいですね!
ネットにする紐は、編む過程で、輪っかの中をくぐらせたりするので、まとめて玉にしておかなくてはなりません。さらに、するするとスムーズに出てくるようにしておかないと、作業がうまくすすまない。最初はまず、その玉の巻き直しなどをしたりして、思わぬ時間をとられてしまいました。ネットを編む作業は、慣れてしまうと単純ですが、習得するには個人差がある。長谷川さんは苦戦。竹芸の担当の稲垣さんは、普段の仕事と似通っている部分が多く、すぐに慣れていました。でも、編み目の大きさがまちまちだったり、やっていくうちにだんだん大きくなったりして、何度もやり直していました。
ネットの最初の編み始めは「いぼむすび」というそうです。ネットづくりでは、結び目になるところが「動かないようにする」というのがポイント。ちょっとした加減で、編み目が動くようになってしまいます。そのあたりは、「房総のむら」の後藤さんも手が覚えているので、なかなか言葉では説明がうまくいかず、みんな苦労しました。あみ目の増やし方や「背中」と「脇」の部分の繋ぎ方なども大事なところ。ここができないと、自力で蓑づくりができません。
蓑の簡単な設計図みたいなものを後藤さんが書かれており、見せていただきましたが、素人にはなかなかわからりづらい。今後のために背中の部分、脇の部分、襟の部分、つなぐ紐などを色分けして、ネットだけの見本をつくってみるとよいのではないかと田村から提案をしました。
研修を終えて、車で帰路につきます(写真提供:長村みち子)
タイトル画像:「房総のむら」で蓑を作る作業をしているところ。(写真提供:Studio.nom 野村祐紀)