小町姫の蓑
歌舞伎では役柄によってさまざまな種類の蓑を使い分けています。参考までに、「百姓蓑」の他にどんな蓑があるのかを藤浪小道具株式会社の近藤真理子さんから教えていただきました。
【加賀蓑】
蓑に網がかけてあるのが特徴で、『仮名手本忠臣蔵 五・六段目』の千崎弥五郎が着ている蓑がこれにあたる。歌舞伎の芝居では、役人の道中で一番偉い人だけ、網のかかった加賀蓑を使用し、ほかの役と区別している。『四千両小判梅葉』の浜田左内という同心の役なども同様。
『四千両小判梅葉』の浜田左内の加賀蓑(左:前半用、右:後半用)
浜田左内は雪の中を旅していったん暖を取りに行き、その後再び登場する。このため蓑も雪のついているものから(前半用)、ついていないもの(後半用)に着替える。
【青蓑】
加賀蓑の網のないものを藤浪小道具では「青蓑」と呼んでいる。網をかけるほどでない役人、武士などが使用。蓑の色合いが青っぽく見える素材を用いる。『義経千本桜 渡海屋』で、義経と四天王の一行が旅立っていく時にもこれを着ている。
青蓑については、数年前に製作を頼んだ後は、新規で製作してもらっていないとのこと。
【肩蓑】
『京鹿子娘道成寺』の「押戻し」大館左馬五郎照剛や『国姓爺合戦』の和藤内が着用。
『桜姫東文章』の桜姫は、三囲の場で肩蓑を着用している。これはたけの短い青蓑で、紐の部分が「きれいごと」にしてある。
歌舞伎舞踊『積恋雪関扉(関の扉)』の小町姫は、黄麻の肩蓑を着用。麻を黄色に染めたもので、金糸も一緒に入っている。舞踊などでは、リアルさよりも美しさを重視するため、こういう作り方をしたものと思われる。
歌舞伎演目案内Webサイト『積恋雪関扉(関の扉)』の「作品のあらすじ」内に、肩蓑をつけた小町姫の写真があります(「都から恋人」の記事の一番左の写真。ちょっとわかりづらくてすみません)。
http://enmokudb.kabuki.ne.jp/repertoire/457?tab=arasuji
トップ画像:『積恋雪関扉(関の扉)』の小町姫の黄麻の肩蓑
(写真提供:藤浪小道具 近藤真理子さん)