能・道具改良
Vol. 2

(2) 2011年11月 調査の方針と方法について悩む

hyousi

12/09/23 UP

10月に梅若玄祥先生にお目にかかってから、さて、これからどんな風に調査を行っていけばいいのか、そのやり方(切り口)について改めて考えはじめました。これが非常に悩みました。

能楽で使う道具は沢山ありますが、例えば「かぶるもの」ばかりを集中的に調査するという方法もあります。歌舞伎のほうで床山の調査に着手しているので、頭まわりで両者を比較するのもおもしろいかも?と思ったりもしました。でも、ちょっとマニアックかもしれません。

あるいは、「羽衣」という曲(演目)で使われる道具の全てを調査するというように曲別に調べるというのもよさそうです。「羽衣」で使われる道具が何種類あって、そのうちのどのくらいの道具が技術継承がうまくいっていて、どんな道具が消えそうになっているかがわかると、一般の方もイメージしやすいかもしれない。

でもしばらく検討してみて、「待てよ」と思いました。
私は現場で困っていることの何かお役に立ちたいと思って活動をしているのに、こうした調査は能楽師さんの手を大変わずらわせることになります。道具の調査が現場に負担をかけることは、歌舞伎床山の調査の経験からよくわかっています。

例えば歌舞伎の床山の調査で道具をひとつを出してもらおうを思ったら、親方さんにお願いし、その指示を受けて若い方がいろいろ立ち働いて、やっと目の前に道具が出てきます。若い職人さんは親方さんに気を使い、ずっと仕事になりません。もちろん親方さんだって仕事になりません。日々のお仕事もあるお忙しいなか、そうやって現場の方に負担をかけないと調査はできないのです。

そんなこんなで一人で悩んでいるときに、いろいろ相談に乗ってもらったのが樋野晶子さんです。晶子さんは大学時代に能を習われていた方で、日頃一緒によく能を見にでかけています。行き詰まっては相談。こんなのどう?と思いついたら報告、ということに何度もお付き合いいただきました(「伝統芸能の道具ラボ」全体の相談にもたくさん乗っていただいています!)。

そして最終的に、玄祥先生に梅若会の道具の現状を教えていただき、何に取り組むべきかを具体的に相談したほうがいいだろうということになりました。

玄祥先生に連絡を差し上げて、お時間をいただく。
小市民の私にはかなり勇気が必要です! 連絡を差し上げるタイミングは慎重にしつつ、でもあまり遠慮ばかりしていても調査は進みません。このあたりが非常に難しいです。
そして、えい!と携帯電話を手にとり、ボタンを押します(まだスマートフォンではなかった)。

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