鹿の子絞りの髪飾り「鹿の子」
2009年12月13日。
歌舞伎床山の高橋敏夫さんと一緒に、吉岡健治さんが館長をされている京都絞り工芸館にうかがいました。
京都絞り工芸館は烏丸御池駅から歩いて10分くらい、二条城の近くにあります。
ちょっと緊張して訪問しましたが、吉岡さんと高橋さんはすぐに打ち解けて、本題に突入!
それまでいろいろ心配していましたが、全くの杞憂でした。
そして、打合せはぐいぐいと進んでいきます。
「一丈」「一尺」「一寸」と、普段聞き慣れない尺貫法の単位が続出。
私はボリューム感のイメージがうまくつかめないまま、打合せにお付き合いしていました。
勉強不足です。
吉岡さんは、最終的にどのような「鹿の子」が欲しいのかを知るために
細かな質問をどんどん高橋さんに投げていかれますが、それがとってもおもしろいのです。
・歌舞伎の舞台では、どのように使うのか?
・見本で持ってきた「鹿の子」のどのあたりに不満があり、どのようにしたいのか?
・どのくらいの長さ、幅が必要なのか?
・布地の幅に「麻の葉模様」の柄がいくつあるのが理想的か?(麻の葉模様の柄の大きさ)
・布地の両端は、ひだがあるほうがいいのか? ないほうがいいのか?
などなど。
「鹿の子」は、髪に飾るものですが、舞台上で俳優さんの肌に触れて
汗がうつることもあるため、湿気でのびてしまうことがあるそうです。
それを聞いた吉岡さんは「パールトーン加工」をすることを提案されていました。
吉岡さんは値段とのバランスも考えながら、いろいろ考えをめぐらせておられるようでした。
そして、「布地さがし」が最初の難関になるだろうと言われました。
私は絞る技術が一番大変だろうと思っていたので、ちょっと意外でした。
吉岡さんによると、布地は絞る前と、絞った後では風合いが違ってくるそうです。
固い布だと思っていても、制作の工程で水につけるとふにゃふにゃになるものもあるらしく
最終的にどのような張り、風合いになるかを見極めるのは難しいとのこと。
たしかに、「鹿の子」がよれよれしていたら、かつらに飾ったときの雰囲気が異なります。
髪に飾る「鹿の子」は布地が厚いと重くなってしまいますから、軽さも重要なポイントです。
想像以上に、いろんな関門があるようです。
まずは吉岡さんに「布地さがし」からお願いして、1年くらいかけて
ゆっくり復元していきましょうということで話しがまとまりました。
この日は、絞り染めについてもいろいろと教えていただき、大興奮の1日でした。