鹿の子(復元) KANOKO
Vol. 3

(3)2009年11月 吉岡健治さんと初めてお会いする

「鹿の子」を縫う

12/02/23 UP

2009年11月28日。
私は、銀座で開かれていた「第13回 京都絞りフェア2009 in 銀座」(会場:紙パルプ会館2会 フェニックスプラザ)に出かけました。
驚いたことに、その会場は床山の高橋敏夫さんのお仕事場のすぐそばでした。
高橋さんはちょうど、南座の顔見世興行が11月30日からはじまるため、京都へ行かれていました。
(そのときの顔見世興行のチラシはこちら http://bit.ly/1xNXvW
そこでとりあえず私が吉岡健治さんにお会いして、お話をしてみることに。

京都絞り工芸館の館長・吉岡健治さんは、とても気さくな方で、こちらの話を真剣に聞いてくださいました。
そして、高橋さんから預かっていた歌舞伎の鹿の子絞りの飾り「鹿の子」の切れ端をお見せしたのです。

「鹿の子」のような日本髪にかざる布を「手絡(てがら)」と言います。
歌舞伎では、「麻の葉模様」のものが多く、今回復元したいものも麻の葉模様です。

吉岡さんは、手絡についていろいろ詳しく教えてくださいました。
明治の初めのころまでは手絡はよく売れていたけど洋髪になるに従って売れなくなってきたこと、
歌舞伎の手絡(鹿の子)の麻の葉模様は、一般の手絡より柄が大きいこと、
着物の布地では厚すぎてダメなので、もっと薄い布地を探さないといけないこと、などなど。

吉岡さんはさまざまな技法の絞りを扱ってこられたそうですが、
歌舞伎の「鹿の子」のようなものはこれまで経験がなく、できるかどうかはやってみないと
分からないとのことでした。
そして、実際に使っている「鹿の子」の現物を見せてほしいとおっしゃいました。

絞り染めについて私はほとんど知識がありません。
高橋さんから預かっている「鹿の子」の技術が、どれほど難しいものか、ほとんどわかっていませんでした。
専門家の吉岡さんが、「難しい」と言われているのを聞いて、やはりこのプロジェクトは難度が高いのだなと改めて感じました。
でも、吉岡さんが現物を見せてほしいと言ってくださることに、大きな希望を感じました。
そして、吉岡さんのお人柄がとてもよく、この方となら高橋さんをお引き合わせしても大丈夫だなと思いました。

名刺を交換して、連絡を取り合っていくことになりました。
今思うと、貴重な1日でした。