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能楽や歌舞伎には、さまざまなところに組紐や房が使われています。頭にかぶるものを顔に留める紐、装束の袖や胸元を飾る紐や房、刀類には下緒(さげお)という紐がつきますし、髪飾りとしても用いられます。こうした組紐や房を作る専門の職人さんがいます。
東京都の東久留米市にお仕事場をもつ柏屋の江口裕之さんも組紐・房を手掛ける職人さんです。以前、歌舞伎の記事のために取材したことがご縁で、これまでさまざまなご協力をいただきながら交流しています。江口裕之さん、そして作業を手伝いながら陰から支えている奥様の惠さんと関わらせていただくことは、とても勉強になりますし、「職人」の新しいあり方を見つけていけるような気がしています。
江口裕之(えぐち ひろゆき)
昭和39年生まれ。幼少時より祖父や父の仕事を見て育ち、高校時代には家業の手伝いを始める。大学卒業後は企業に勤めるが、平成4年に退職して家業に戻る。その後、平成17年に父・有次が急逝し「柏屋江口」3代目となる。
歌舞伎の逸品を手に入れる 組紐編(取材・文 田村民子)
http://www.kabuki-bito.jp/special/tepco/36/no1.html
江口さんのように、伝統芸能の世界の中でお仕事をされている方は、非常に高いレベルの技術をお持ちです。一般市民はなかなかそれを知ることや交流することはできませんが、いい形でつながりたとえば「1人の職人を、100人の市民で応援する」ことができれば、新しい広がりが生まれ、貴重な技術を持った職人を守ることができるのではないかと考えています。
「伝統芸能の道具」の質を保ちながら未来に継承するには、いい技術をもった職人さんが、経済的にも精神的にも安定してお仕事ができる環境を整えることが大事です。そこが解決しなければ、後継者問題も解決しません。市民でできる職人支援の形を模索しながら、少しずつステップを進め、情緒的な面だけではなく、経済的な面も含めて応援できることを目標としたいと思っています。