実験中のチガヤ
百姓蓑の復元は、2005年3月に一応完成しましたが、まだ色味の問題が残っています。このたび新しく作った蓑は、青い色をしていますが、百姓蓑はもう少し赤みである必要があるのです。紫外線ライトに当てたり、いろいろ試みてきましたが、なかなかいい結果がでません。そこで、歌舞伎の小道具の組紐などを作っている職人の江口裕之さんのご協力をいただくことにしました。
組紐を作る際に、ご自身で染めをされることもあるので、蓑を染めていただくことにしたのです。まずは、蓑の材料であるチガヤを少しだけ染めて、実験していただくことになりました。
1回目:
左の2束が材料(染める前)、右の2束が染めたもの。
仕上がりはイマイチ。
試行錯誤の最終版:
上の緑色のものは人工染料で染めたもの。うまく色がはいらず、逆に青くなってしまいました。
下は天然染料で染めたもの。こちらは、なかなかいい色みになりました。
小道具の近藤真理子さんも、最終版の下のほうの色なら、まずます大丈夫とのこと。そこで、2015年の夏に収穫したチガヤは、まず天日干しをして、少し青みを抜いた後、天然染料で染めてもらい、その後で編む作業をしてもらおうということになりました。さて、うまくいくでしょうか。
【染めを担当していただいた江口裕之さんのご紹介】
江口裕之(えぐち ひろゆき)
昭和39年生まれ。幼少時より祖父や父の仕事を見て育ち、高校時代には家業の手伝いを始める。大学卒業後は企業に勤めるが、平成4年に退職して家業に戻る。その後、平成17年に父・有次が急逝し「柏屋江口」3代目となる。
歌舞伎の逸品を手に入れる 組紐編(取材・文 田村民子)
http://www.kabuki-bito.jp/special/tepco/36/no1.html