普及活動
Vol. 24

(24)2018年10月12日 グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンで講演しました(東京)

講演の様子

18/10/13 UP

グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)の環境経営分科会にて、講演「伝統芸能の道具と自然環境 〜道具の復元に企業が貢献できること」を行いました。


グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン http://www.ungcjn.org/index.html


グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンは、「国連グローバルコンパクト(UNGC)」に賛同する日本の団体で、世界各国にローカルネットワークがあります。
「国連グローバル・コンパクト」とは、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組み作りに参加する自発的な取り組みをさします。多くの企業や団体が、これに参加し、社会の良き一員として行動しようとしています。


とても大きな視野の取り組みですが、どうして道具ラボが関わることになったかというと、道具ラボの活動を環境の専門家という視点で支援してくださっている株式会社エコロジーパスさんが、このGCNJの環境経営分科会に所属していて、このたびお声がけをいただいたというわけです。


エコロジーパス http://ecopath.co.jp/





【グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ) 2018年度 第3回 環境経営分科会】
2018年10月12日(金)
場所:お茶ノ水ソラシティ(東京都千代田区)


(1)進行説明
(2)講演①「メガスポーツイベントで求められる持続可能性配慮」
総務局 持続可能性部 持続可能性計画チーム係長 杉本信幸氏
講演②「伝統芸能の道具と自然環境」 伝統芸能の道具ラボ 田村民子
(3)ディスカッション





杉本信幸さんの講演は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックについて。そもそも、どういう目的で開催されているのか?という問いかけからはじまりました。
スポーツの大会というイメージが強いのですが、「大会全体を通じて、社会をよい方向に変えていく」というのが根底にある理念なのだそうです。たしかに、スポーツだけでなく、伝統芸能を含めた文化の祭典でもあり、1964年東京オリンピック大会においては『オリンピック能楽祭』として10日間演能がありました。杉本さんは、環境や人権の視点も含め、大きな視野で大会運営に関わっておられるようで、その詳細もたくさんお話されていました。


道具ラボからは、伝統芸能の道具と自然環境の関わりについての具体例や、道具ラボが取り組んできた復元についてお話をしました。歌舞伎の蓑の復元、歌舞伎の櫛を眼鏡の技術で復元したこと、それから現在、進行させている能の道具の「羽団扇」の取り組みなどについて、具体的なプロセスなどをお話しました。


刺激的だったのは、講演後のディスカッション。参加者が8人くらいの班になって、2つの講演を聴いた感想や意見を述べ合ったり、講師への質問をまとめたりして、最後に発表するのです。


道具ラボの講演についても、率直な感想や意見が聞けて、非常に有意義でした。ふだんは、やはり伝統文化が好きな人達と話すことが多いのですが、参加者のほとんどは歌舞伎や能を見たことがない人(大企業のCSRや環境部門の方)でした。そういう方達が、この活動をどう感じ、どんなところに違和感をもっているのかはすごく知りたいところでした。


たとえば、能の道具の羽団扇のために希少種のイヌワシやクマタカの羽根を利用できるようにするための活動については、「希少種を守るためには、羽根に価値を与えない、ということが大事なのではないか」という意見もあり、ちょっと考えさせられる場面もありました。このあたりは、私自身の理解が浅い部分でもあり、しっかりと答えることができませんでした。


後日、環境の専門家の北澤哲弥さんに報告したところ、「羽根に価値を与えないというのは、象牙など過剰利用につながる生き物の場合は大事ですね。羽団扇の場合は、利用が少なすぎて継続しない方の問題なので、野生生物の問題も原因は一つでないことに、参加者が気がついてくれたのなら、有意義でしたね。伝統芸能と野生生物との課題を整理してパターンを押さえておくのは大切です」という意見をいただきました。北澤さんにもご協力いただきながら、このあたりをしっかり詰めておきたいと思います。


講演後のアンケートでは、さまざまな感想が寄せられました。
「日ごろ関心を持たない伝統芸能と生物多様性が文化的サービスの面で、非常に関わっていることを知り、生物多様性についての理解を深めることができました」
「どのようなことにも人的ネットワークが重要だということを改めて実感しました」
「御朱印帳の伝統芸能版があれば、みんなも知る機会が増えると思います」
「どうしたら持続可能に文化を支える道具が供給できるようになるか、考えてしまいました。材料もさることながら、技術の伝承も課題と思いました。また、材料の調達については、インターネットが発達している現在は、ひょっとして以前より進めやすいのかとも思いました。なにかプラットフォームを作り、進められたらいいのではと思いました。3Dプリンターの活用等の話も出ていましたが、オンデマンドで必要なものが必要な数だけ(少量であっても)作れる時代(今は書籍がそのようになっています)も近い将来訪れると思います」


また、「伝統芸能も、芸であると考えると、面白くないものはなくなっても仕方ないという考えもある」「よい活動だが、企業が協力したいと思っても、どんな風に関わればいいのかイメージがわかない」という感想もありました。基本的に道具ラボの活動を評価してくださった上で、前向きなご指摘で、とてもありがたく拝聴しました。
こうした一般の方からのご意見は、根本的なところを突いたものも多く、とても貴重な時間となりました。

ひとつひとつのご意見をしっかり検証し、次へつなげていきたいと思います。

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