東京邦楽器商工業共同組合と東京文化財研究所 無形文化遺産部の共催で開催された公開学術講座「伝統の音を支える技」にて、伝統芸能の道具ラボの田村民子がお話をさせていただきました。以下に簡単ですがご報告いたします。
「伝統の音を支える技」
第24回東京三味線・東京琴展示・製作実演会
第12回東京文化財研究所無形文化遺産部公開学術講座
プログラムの詳細はこちらをご覧ください。
http://www.tobunken.go.jp/ich/public/lectures/lec12
・主催:東京邦楽器商工業共同組合・東京文化財研究所無形文化遺産部の共催
・日時:2018年8月3日(金)
・場所:東京文化財研究所(東京都台東区上野公園内)
プログラム
10:30~12:00 楽器製作実演(箏・三味線の製作実演、パネル・資料展示等)
13:00~13:20 パネルトーク 前原恵美、橋本かおる(ゲスト、東京藝術大学教育研究助手)
13:30~15:45
【講演 Ⅰ】楽器製作・修理技術の調査から見えてくること 前原恵美(東京文化財研究所)
【講演 Ⅱ】「邦楽器糸から世界への挑戦―日本の音色を世界の音色へ―」 橋本英宗(丸三ハシモト株式会社)
【講演 Ⅲ】「伝統芸能の道具の課題を社会にひらく」 田村民子(伝統芸能の道具ラボ)
【総括】伝統の音を支える技の今とこれから
谷垣内和子(コメンテーター、公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会)
橋本英宗(丸三ハシモト株式会社) 田村民子(伝統芸能の道具ラボ) 前原恵美(東京文化財研究所)
16:00~17:00 長唄演奏《多摩川》
唄:三井千絵・大島早智/三味線:鈴木雄司・都築明斗
パネルディスカッション
各者の講演後に、全員でパネルディスカッションを行いました。和の楽器を作る技術は、危機的状況にあるものも多く、そうした課題を具体的にどう支援していくか?などを話し合いました。ちなみに腰掛けている椅子は、いわゆる「山台」(この後、長唄演奏があったため)。
前原恵美さん
このたびの公開講座の中心軸となって、とりまとめをされた東京文化財研究所の前原恵美さんによる楽器製作技術の調査報告。現場に足を運んで、丁寧に調査をされたことがよくわかる報告でした。単に調査をするだけでなく、現場で見て、聞いて、感じた「課題」を自分の問題として引き受け、外部者がどうやって支援していけばいよいか?ということを真剣に考えておられる研究者さんです。
田村民子
田村の講演で用いたスライドの一部
田村は「伝統芸能の道具の課題を社会にひらく」というタイトルで、これまでの道具ラボの活動について30分間、お話をしました。歌舞伎の床山さんや能楽師さんなどが日常で困っている課題を、社会とつなぎながら解決した具体例をお話するとともに、支援される側の人、支援する人がどういうことに気をつけていったらよいかなども、お話をしました。
橋本英宗さん(丸三ハシモト株式会社)
三味線や琴などの弦楽器の糸を作っている丸三ハシモト株式会社の橋本英宗さんの講演。職人として技術を磨いていくだけでなく、経営が続くようにアジアに市場を拡大するなどの努力もされている様子をお話されました。
三味線、琴の製作実演
当日は、楽器を作っておられる職人さんも多く来られて、実際に製作の様子を見せてくださいました(トップの画像もそのときの様子です)。
パネルトーク
前原恵美さんと、一緒に多くの調査をしてこられた橋本かおるさんによるパネルトークも聴き応えがありました。
長唄の演奏
最後の締めくくりは長唄の演奏。楽器について、いろいろ語り合った一日でしたので、楽器の音、そして邦楽の声をより意識して、面白く聞くことができました。
なんだかとても緊張してしまいましたが「大切な和の音を未来に伝えたい」という同志にたくさん巡り会えた、大切な時間となりました。当日、お越しくださいましたみなさま、関係者のみなさまをはじめ多くの方にお世話になりました。ありがとうございました。
写真提供:東京文化財研究所