鹿の子のキセル入れ
Vol. 3

(3)2016年7月 絞り染めの「キセル袋」が完成

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16/08/09 UP

藤浪小道具の近藤真理子さんと、京都絞り工芸館の吉岡信昌さんがやりとりをしながら、キセル入れのための絞り染めの布づくりは、確認作業を重ねながら進んでいきました。京都の吉岡さんも、いろいろ工夫をしてくださったようです。
染めの段階では、吉岡さんから、「とても細かく絞ってあるものですので、きれいに谷の部分が染まる事を願っています」という途中報告をいただきました。今回の染めでは、以前、復元をお願いした「鹿の子」を染めてもらった職人さんとは違う職人さんにお願いしてみたとのこと。色や絞りの感じで、どの職人さんにするかを選んでおられるようです。

そして、染めが完了。京都の吉岡さんから出来上がった布地が藤浪小道具さんへ届きました。真理子さんをはじめ、上司の方からも満足いただけたようで、無事に布地が完成となりました。その後、藤浪小道具の縫製担当者の手によって、キセル袋の形に仕立てられました。以下は、京都の吉岡さんからのご感想です。

「初めて実物(これまで使用していた古いキセル袋)を見せていただいたときは、あまりの(絞りの粒の)細かさにびっくりしました。お聞きすると50年くらい前の物とのこと・・・。在庫を確認すると、私共の持つ、最も細かい総絞りの無地が10反染めずに残っていました。20年近く前に絞ったものです。見本で見せていただいた物とは、違いはありましたがこれが役に立って良かったです」。

貴重な布地が、歌舞伎の舞台のために命を吹き込まれたことをとてもうれしく思います。これから歌舞伎の舞台をご覧になるときは、ぜひキセル袋にもご注目ください!

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完成したキセル袋。藤浪小道具の社内の縫製担当者が手作業で仕上げています。

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このように端を結んで使うそうです。

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裏地も、京都で染めてもらいました。

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余った布地で、町娘用の莨入れ(上)とキセル入れ(下)も作ったそうです。