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歌舞伎の女方専門の床山である高橋敏夫さんのお仕事の様子を中川未子さんにイラストにしていただきました。床山の仕事場を訪問していただいた他、床山ワークショップなどにも足繁く通っていただき、実に丁寧に取材をしていただきました。原画はもっと魅力的です! 床山の高橋さんも「よく描けているねー」と喜んでおられました。
描いていただいたのは、歌舞伎の女方(おんながた)の床山しか使わないという「二枚櫛」という技法です。かつらの両サイドの部分を「鬢(びん)」というのですが、そこをふわっと美しく結い上げるための特殊なやり方です。同サイズの大きな櫛を2枚使って、それは見事に結い上げていかれます。ワークショップなどでも、この二枚櫛ですーっと鬢が美しい形になる瞬間には「わ〜〜〜」っと観客から声があがります。
【女方の床山 二枚櫛で鬢を結う】
鬢(びん)は、だいたい左側からとりかかります。髪を櫛で何度もとかして整えます。床山の視線、かつらに対する身体の向き、力の入れ加減など、実によく描けています。
2枚の櫛を使って、さらに鬢を整えていきます。2枚の櫛を扱う手つきはスーッ、スーッとリズムよく、流れるようです。
どうして2枚の櫛を使うのか、このあたりにミソがあります。鬢の形をとりつつ、髷(まげ)の根本の「根(ね)」と呼ばれるところに髪の一方をまとめていきます。
「根」にしっかりまとめつつ、鬢に当てていた櫛をはずしていくと、なんともいえないふっくらした形に鬢ができあがっています。これをあっと言う間にやってしまわれます。実際の作業は見とれている間に出来上がってしまう、という感じです。床山の素晴らしい技芸です。
*イラストの無断転用、ご遠慮ください。