新橋演舞場の夜の部『仮名手本忠臣蔵 七段目』のお軽の髪と衣裳に注目してみます。
大星由良之助 = 松本幸四郎
★お軽 = 中村芝雀(下のチラシの写真、上の段・左から2番目)
寺岡平右衛門 = 中村吉右衛門
『仮名手本忠臣蔵』は、上方式(関西)と江戸式(東京)で演出が異なる部分が多いのですが、東京の俳優さんのほうが圧倒的に数が多いですから、江戸式でやるほうが多いです。最近でいうと、2010年1月に大阪松竹座で『仮名手本忠臣蔵』の通しを上方のやり方で上演しています。2013年1月も江戸式。
上方式と江戸式の大きな違いは、おおざっぱに言うと上方は写実的、江戸は様式的であることです。お軽の扮装も、江戸では紫色の着物、上方では遊女の普段着である胴抜(どうぬき)を着ています。お軽は自分の部屋にいるわけですから、胴抜を着ているほうが事実関係としては近いことになります。
髪型は、いずれも「丸たぼ」の「つぶし島田」。琴柱(ことじ)と呼ばれるかんざしを指していますが、上方では先が三味線のバチのような形、江戸では耳かきのようなとっくり型です(『かぶき手帖2012年版』をお持ちの方は、P48に同様の記事を書いております。舞台写真もありますので、見比べてみてください)。
「七段目」では、大道具も上方と江戸で異なります。大きな違いは、屋体(やたい:建物のセット)の高さです。上方の方が低く、屋体の前の階段の段数や形も異なります。床の下にもぐる人は、屋体が低いと大変じゃないかしら、なんて思ったりしていまいます(笑)。その他にも、細かいところでいろいろ差があって、おもしろいです。
個人的には、屋体の奥にかかってハラハラ揺れる長のれんが、芝居らしくて好きです。
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