歌舞伎の演目名は、漢字だらけでとっても読みにくいですね。『籠釣瓶花街酔醒』は「かごつるべさとのえいざめ」と読み、だいたい「かごつるべ」と略して呼びます。ちなみに、正式な演目名のことを「本外題(ほんげだい)」と言います(本名題という場合もあります)。
『籠釣瓶花街酔醒』は、歌舞伎座さよなら公演でも上演されていましたね。私の友人は、当日発売の一幕見席のチケットを買うために何時間も並んでいました。当時は、歌舞伎座近くに勤めていたので、途中、おやつを差し入れに行きました。なつかしいなぁ。あの頃は、歌舞伎座閉場に向けてみんなちょっと異様な雰囲気でした。この前、ある大道具さんとお話をしたときにも「あのころは、ちょっとトランス状態だったね(笑)」と想い出話をしました。
【歌舞伎座 2010年2月 夜の部】
佐野次郎左衛門 = 中村勘三郎(18代目)
兵庫屋八ッ橋 = 坂東玉三郎(5代目)
繁山栄之丞 = 片岡仁左衛門(15代目)
ちなみに、過去の歌舞伎公演を検索したいときは、(公社)日本俳優協会のWebサイトにある「歌舞伎公演データベース」がとても便利です。私もよく使います。
歌舞伎公演データベース
http://www.kabuki.ne.jp/kouendb/
さて、そろそろ道具のお話に入ります。
この『籠釣瓶花街酔醒』には、八ツ橋(やつはし)という名前の美しい遊女が出てきます。場面によって、八ツ橋さんのヘアスタイルは変わるのですが、次郎左衛門が初めて八ツ橋に出逢う場面では、かなり派手な髪型をしています。
その髪型の写真はこちらをご覧ください(田村が担当した記事にジャンプします)。
http://www.kabuki-bito.jp/kabuki_column/hanakazura/201004.html
『かぶき手帖2012』をお持ちの方は、P23に次郎左衛門と八ツ橋の写真が掲載されています。
(田村が特集記事の執筆を担当しています。劇場や日本俳優協会のWebサイトで購入できます)
写真を見ると、八ツ橋は4色のカラフルな布を髪に飾っているのがおわかりいただけると思います。これは薄い絹に「絞り染め」の技法がほどこされた布で、髪を結い上げる「床山(とこやま)」という職人さんは「鹿の子(かのこ)」と呼んでいます。
この「鹿の子」を作れる人がいなくなっていたという話しを床山の親方さんからうかがい、2009年から田村が復元に取り組みはじめ、約1年をかけて復元のお手伝いをさせていただきました。
復元の過程については、こちらをご覧下さい。
http://www.dogulab.com/activity/k-1/00.html
現在は、その「鹿の子」が歌舞伎の舞台で使われています。見えづらいかもしれませんが、絞り染めで「麻の葉模様」が描かれています。絞りの粒の目が小さく、模様が複雑なので非常に難しいそうです。京都絞栄会という京都の絞り職人衆のみなさんが尽力して復元できた貴重な飾りです。ぜひ「鹿の子」にもご注目ください!
新橋演舞場 十二月大歌舞伎
平成24年12月1日(土)~25日(火)
『籠釣瓶花街酔醒』は夜の部で上演されます。
http://www.kabuki-bito.jp/theaters/shinbashi/2012/12/post_45.html
シネマ歌舞伎のサイトで、ちらっと動画も見られます。
http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/20/