鹿の子(復元) KANOKO
Vol. 6

(6)2009年12月 一流の職人同志の共同作業

色とりどりの鹿の子

12/04/27 UP

12月に京都絞り工芸館の館長の吉岡健治さん、そしてご子息で副館長の吉岡信昌さんに
お会いした帰り路のこと。
歌舞伎床山の高橋敏夫さんは、「あのお二人なら、きっといい鹿の子を作ってくれる。大丈夫」と
言われました。

高橋さんは、これまでも何度も「鹿の子」の復元にトライしてこられていました。
でも、うまくいかなかった。
「鹿の子」を復元させることがいかに難しいかを、よく知っておられます。
でも、「大丈夫」とほくほく顔です。

これは私の経験からなのですが
こうした難しい問題に取り組んでいただくときに、うまくいかない例には2パターンあります。
1つは、「はい、できます!」と調子よく言って、出来の悪いものを平気で出してくる。
(課題の難しさがわからないまま仕事をして、最後までわからない)
2つ目は、「できません!」とすぐに断られる(課題の難しさがよくわかっていて、即断る)。

吉岡さんは「鹿の子」の質の高さをちゃんと見抜き、課題の難しさをすぐに理解されていました。
それゆえ軽く「できます」とはおっしゃらないのですが、慎重に慎重に全体の作戦を練って
なんとか、いい質のものを復元しようとしておられる。
その姿勢を見て、高橋さんは「この方なら大丈夫」と感じられたのだと思います。

こうした、一流の職人と職人のやりとりを間近で拝見することは
非常に楽しく、そして勉強になります。
また、吉岡さんが商売を抜きにして、「歌舞伎のために」という心意気でのぞんでくださっていることにも
心を動かされました。

ものづくりの制作のディティールは、制作に関わっていなければ
なかなか見たり、教えていただいたりすることはできません。
これは本当にオモシロイところです。
こうした「喜び」が、私の活動の中心です。