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田村日記

道具マニア目線で解説「歌舞伎座の松羽目」

22/11/03 UP

このところ歌舞伎の「松羽目(まつばめ)」がマイブームで、昭和期からの松羽目をいろいろ見比べて、へ〜って喜んでます。松の全体のフォルムとか、葉の描き方とか、ずっと見てると眼が肥えて、細部の違いがわかるようになって、面白いんです。歌舞伎座の絵描きさんにも、お話聞いたりしたんですけど、奥深い〜。

改めて、解説!
「勧進帳」や「土蜘」などで見られる大きな松の歌舞伎の背景画を松羽目(まつばめ)といいます。絵描きのトップがごだわりを持って描くもので、その時期ごとに微妙に違います。舞台正面にずっとあるものだもの。そりゃ、描く人は心をめいっぱい注ぎますよね。
能がお好きな人は、能楽堂ごとに鏡板の松がそれぞれ違うことをご存じですよね。松でも、ずいぶん雰囲気ちがいますよねーー。


現在の歌舞伎座の松羽目は、2022年11月1日の十三代目市川團十郎白猿襲名披露記念 歌舞伎座特別公演 二日目「勧進帳」がラスト出演。11月7日からの11月歌舞伎座公演では、新しい松羽目に入れ替わります。
少し補足をすると、松羽目は上演ごとに毎回描くのではなく、ある一定期間は同じものを使います。今はちょうどそのレアな入れ替わり時期、ということです。


それから、「松羽目」は、大道具会社ごとにも雰囲気が違っています。板の部分の塗りについても、マニアメガネの目でじーっと見ると違いますよ。松羽目は、各地の劇場やホール、公民館など、いろんなところにあると思います。全国松羽目放浪記とかできたら、楽しいかもw


歌舞伎座の新・松羽目は、11月公演・昼の部「勧進帳」で見ることができますよ。道具転換はありませんので、たっぷりと松を眺めることができます。ここがいい!という感想があったら、「#歌舞伎座の松羽目」をつけてぜひツイートを。絵描きさんのはげみになります。代理で絵描きさんに声を届けますよ!


歌舞伎演目案内「勧進帳」
舞台写真が掲載されており、部分的ですが松羽目を見ることができます。
https://enmokudb.kabuki.ne.jp/repertoire/673/


トップの写真は、広島・厳島神社の海上能舞台です。
2022年秋の観月能が終わった後で撮影しました。
歌舞伎座の絵描きさんに見てもらったら、こんなコメントをいただきました。
「湿気と塩気じゃ、松の絵ももたないでしょうね。板に描く時は、絵の具の食いつきを良くする為に胡粉(ごふん)を下塗りするので、白く見えているのは胡粉か白土だと思います」
描く現場の技術、たくさん工夫があることを実感しました。

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