私は伝統芸能の道具に関する裏方さん、職人さんを取材することが多いのですが、「取材する日」という点ではなくて、継続的に関わる「線」あるいは「面」の長いスパンの取材もとても大事だなと思っています。本番の時間よりも、雑談の会話のほうが、濃厚な内容を得られることも多いからです。
職人さんってシャイな方が多いから、取材というフォーマルな機会だとホンネを話されない方もいるし、こちらが間違って認識していることも、遠慮して「違いますよ」と言ってくれない人もいます。後から仲良くなって、「あれは、本当はちがうんだよ」なんて、言われてびっくりすることも。「えー、それなら言ってくださいよ」とも思うのですが、それはこちらの力が不足しているということ。これまで、たくさんの失敗もしてきました。
でもある意味、初対面の人に大事なことを話しちゃうって、危険なことでもありますよね。その人が本当に信頼できる人物かどうか。きちんと見極めて話さないと、というところもある。だから、初対面でもきちんと信頼してもらえるような「佳き人間」になっておかなくては、とも思います。
ところで、この前、歌舞伎の大道具さんとの雑談ででてきた「絶望的にからまったロープを、みごとにほどいてみせるベテランさんの話」おもしろかったなー。身振り手振りで教えてくれるんだけど、小咄みたいでした。
こういう小さな無形文化の話があちこちに、ころがっています。
きっと、どの芸能の舞台裏もそうなんでしょうね。そういう話を記録して、多くの人に伝えたいなと思います。
トップの写真は、「ハナ」という神様にささげる飾りを作る職人が使う道具。「ハナカキナタ」です。このときお会いした職人さんは、初めて会った人に対しても、自分が大切にしている技術や理念を言語化して伝えることができる人でした。
これからは、こういう職人さんも増えてくると思います。
社会に対して、直接、職人さんが伝えていくことはこれからもっと大事になってくると思います。そういうことができる人は、どんどん語っていってほしいです。
Tags:
関連記事一覧: