横浜の桜木町駅から、紅葉坂というちょっと傾斜のきつい坂をのぼったところに、横浜能楽堂があります。
今日はそこで、「箙(えびら)」という能を見てきました(横浜能楽堂企画公演 風雅と無常-修羅能の世界 第4回「生田の梅」)。
ちょっと変わった趣向で、現代美術家の山口晃さんが、「美術」を担当されているんです。
能では「作り物」と呼ばれる簡単な舞台装置が出ることもありますが、ほとんど決まった型があって、プログラムに「美術」なんていう文字が入ることはありません。トップの画像が、山口晃さんが作られた舞台装置の梅です。
このたびは、能の前に山口晃さんが能舞台に登場されて、ご自身の作品について、お話をされました。
横浜能楽堂では、1/19-3/23まで特別展 山口晃「昼ぬ修羅」が開かれていて、能楽堂内のいろいろな空間に、山口晃さんの作品が展示されています。
この展示内容についても、語っておられましたが、なるほど、解説をきかないと見過ごしてしまいそうになったり、「???」となったりするものもありました。
『美術手帖』のサイト
会場は能楽堂全体。山口晃が個展「昼ぬ修羅」で見せる修羅と夢幻の世界
https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/19191
この山口さんのお話のなかで、おもしろかったことを1つ書いてみたいと思います。
作り物の梅を作るときに、最初に咲いた花ばかりを作って、枝につけたのだけど、それだとなんだか様にならなかったそうです。
これに、つぼみをつけると、いい塩梅になったそうです(山口さんは、塩梅とは言われませんでしたが)。
このつぼみと同じ効果があるのが、松の幹などに描く苔。これがないと、いまひとつなんだけど、苔を入れると、ぐっとしまるとのこと。
この話をききながら、私は歌舞伎の背景画の松を思い出していました。
歌舞伎の松にも、なんだか不思議な感じの苔が描かれます。遠目で見ていると、気になりませんが、近くで見ると、アメーバみたいな(!)感じで、けっこう存在感があるんですよね。これは決まり事らしく、必ず描かれています。
苔がないものを見たことがないのですが、きっとマヌケな感じになるんだろうなとおもいました。
ちなみに、この写真の梅は、終演後に撮影したもの。実は、始まる前は少し違う形をしていました。
本当は、右の枝がもう少し伸びていたのですが、そこは能の演技のなかで、手折られ、シテが持って行ってしまったんです。
どこかの枝を持っていくんだろうなと予想はしていましたが、本当に枝が手折られたときは、やっぱりびっくりしました。
楽しいサプライズでした。
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